月: 2020年8月
この取り組みが見たかった
朝乃山と照強の対戦もさることながら、御嶽海と琴恵光の割も秀逸だったと思います。
今場所十一日目の記事でも書きましたが、琴恵光が愁眉を開きつつあります。
栃ノ心や勢との取り組みのように、差し手の返しや脇褌で胸を合わせて直線的に寄ったり、髙安戦のように執拗に押っ付けや前褌で食らいつく堅実な相撲を取ったり。
今の琴恵光なら、どんな体格・実力の幕内力士相手でも「一発入る」可能性があると思います。
で、今日の御嶽海戦。
右を差して、左の脇褌を引いて、琴恵光が形を作りました。
結局は体に厚みがあって体幹の良い御嶽海の掬いに屈しましたが、十分見せ場を作ったと思います。
審判部にとってもこの割を組んだ甲斐があったというものでしょう。琴恵光もあの内容で尚負けるのであれば、本望ではないのかな。
今場所は三役力士がそろって勝ち越している分、前頭上位の力士は負けが込んでいます。来場所は本割前半戦の上位取組がまた今場所とは印象の異なるものになるはずです。
琴恵光は今十六枚目だからその顔ぶれの中にはいないだろうけど、、、残念。
あの男が帰ってきた
隠岐の海が三役で初めての勝ち越し。(正面解説の北の富士さん、嬉しそうだったな、、)
両横綱は残念ながらそろって休場の不面目を施しましたが、幕内下位の元大関陣も全員勝ち越して、なにやら時代を平成に揺り戻したかのような土俵が展開しています。
そしてシンボリックなのは、なんといっても結びの一番での照ノ富士の対朝乃山戦勝利。
両者上手を引いた立ち合いは互角と見ました。
ここから、照ノ富士は右の浅い差し手を保ちながら左の上手に重心を寄せる一方で、朝乃山は右半身をあおって深い下手を求めます。この時照ノ富士は上手側の左足を前にしており、朝乃山は差し手側の右足を前に出しているのがその証左。
この朝乃山の取り口には、「正面から胸を合わせれば、誰を相手にしても自分有利」という考えが伺い知れます。
朝乃山は自身の信じる取り口を貫き、照ノ富士は実践的なセオリー通りの相撲を取ったといえるでしょう。
ともあれ、朝乃山の上手は切れたために、上手を重視した照ノ富士に形勢は傾きました。
と、テクニック面のことを書いてもなにやらナンセンスな気がするな、、、
照ノ富士が破竹の勢いで番付を上げ、幕内初優勝と大関を獲ったころは、そりゃもう規格外の相撲と、インタビューでの無邪気な受け答えっぷりから、次世代の土俵風景の中心的存在になるものと信じて疑いませんでした。
果たして、照ノ富士を待っていた宿命は、常に賜杯争いの先頭に君臨する最強のヒールではなく、長い闘病と再出世でした。
今の照ノ富士はというと、無理な残し方はせず堅実でリアリスティックな取り口、インタビューでも”悪童”は影を潜め、りりしい求道者のようなオーラを放っています。
まだ28歳の彼に残された土俵人生の後先と今場所の賜杯争いに想像を巡らせながら、今日十四日目の相撲を待とうと思います。