令和元年名古屋場所千秋楽
鶴竜優勝
ずっと前から鶴竜について思っていたことを。
突き押しの重量級力士が幕内上位に飽和してきている昨今の土俵で、鶴竜はその波に抗う最後の牙城なのではないか、ということです。
今場所西の横綱を張った白鵬も、離れた相撲は不得手ではないけれど、応時に比べれば危うい場面が多くなってきています。
しかし、今場所の鶴竜に目を向けると、立ち合いからの突き押しに対する不用意な引きやいなしはほとんど見られません。どちらかというと、離れた相撲の方が安心して見ていられたほど。 (”ジョーカー”・友風には引かれて金星を配給したけど。 )
おそらく、その秘訣はコンパクトに頭でぶつかる立ち合いと、踏み込みにあると思います。特に踏み込みの方。大きく踏み出して、杭を土俵に打ち付けるように直立させる立ち合いの一歩目の足さばきは鶴竜の専売特許だと思います。確かこれについては春場所で荒磯親方もコメントしていました。
そしてその一歩目の左右は、どうやら相手力士によって器用に使い分けているようです。差し手や前褌から四つ身を求める立ち合いであれば、右四つの鶴竜は左から踏み込むことがノーマルですが、特定の力士に対しては右から踏み込むこともあります。その中には北勝富士、玉鷲、大栄翔、千代大龍ら突き押し力士も含まれています。(御嶽海に対しては左から。)
私も力士ではないので、鶴竜の白星とその繊細な立ち合いの力学との因果関係についてこれ以上理説立てて説明することができないのが口惜しいですが。
なんにせよ、張りやカチ上げなどの飛び道具を使わずに、今の幕内上位で突き押しの強豪から安定的に星を稼げているのは驚異的なことです。
私が鶴竜に長い力士生命を願う理由もここにあります。
33歳の円熟に到達し怪我も多い鶴竜ではありますが、いま最も洗練された突き押しの型を持っている貴景勝と、もう一幕二幕の角逐を演じてもらわなければ、困るのです。
六回目の幕内優勝おめでとう、鶴竜関。
千秋万歳。