令和二年春場所五日目

無観客の場所だけど

もし大阪の相撲ファンが府立体育館を満たしていたら、幕内の後半はそうとう盛り上がっていたに違いありません。

中位に新進気鋭の霧馬山がいるし、その上には復調気配の阿武咲、そしてその上位はすべてが濃密な割になっている。

遠藤・正代。これも今や贅沢なカードです。終盤で優勝争いを占うような一番の顔合わせだったとしても不思議でないくらい。

今日の遠藤は、大坂アナが指摘していたように、右、左と踏み込んで右を差しに行きました。遠藤は左四つの力士なのですが、左腕はむしろ前褌を狙いに行くような立ち合いで。

遠藤は、今の正代相手では左四つに組んだとしても、胸を合わせては苦しいと思っているのでしょう。自分十分相手十二分というやつです。

よくよく調べてみると、去年の秋場所の正代との取組でも遠藤は右、左と踏み込んで両差しを目指しています。ちなみにこの場所の正代は3勝12敗とまだ覚醒(?)していない。

つねづね解説陣から相撲巧者と賞賛を浴びる遠藤も今年30歳を迎えます。

184㎝という上背の制約上仕方がないのかもしれないけど、「この四つ身なら誰相手でも勝てる」という型が未だに見つかっていないわけです。

遠藤を出世から遠ざけているのは、彼を「器用貧乏」に押しとどめてしまう、周囲の「巧い巧い」という賛辞なのかもしれませんね。

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令和二年春場所二日目

炎鵬の下手投げ

炎鵬ってこんなに下手投げする力士でしたっけ?

今日は竜電を相手に右の上手を取られてでも、左の下手を深く差して、一緒に土俵に飛びこむような投げ。炎鵬の下手投げと言ったら、先場所十二日目の髙安戦で廻しを抜くような投げで絶賛を浴びたのが記憶に新しい。

深い下手といったら、平成を代表する小兵、舞の海です。

その舞の海さんも、先場所の解説席での口ぶりからして炎鵬にも自分と同じように相手の懐に潜り込む相撲をとってもらいたい様子。

でもやはり、つい最近までの炎鵬のイメージって、肩まで差して結び目に近い下手を引く相撲ではなく、どちらかというと脇褌に近い位置で引いて頭をつける”捻り”王子ではないですか?

最近は下手投げの決まり手が一場所二番くらい見られるようになってきているし、今日の竜電戦を見ると、「上背のある相手は、上手を嫌うよりもあえて取らせて、自身は深い下手」的な意図を感じます。

炎鵬関、ひょっとして舞の海さんの映像なんか見て勉強しているのだろうか。懐の深い正代、朝乃山との取組なんか注目ですね。

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令和二年春場所初日

贅沢な茶の間桟敷の場所

歓声の無い今場所の土俵は稽古場を思わせるような一抹の味気なさを感じます。

一方で力士の呼気や、すり足が土俵の砂を払う音など、本来砂かぶり席でしか聞けないような土俵の細やかな声を茶の間桟敷から聞ける、贅沢な場所と言えなくもありません。

そして、初日の八角理事長の協会挨拶の辞もかなりの評判を得た様子。推敲をしたのは広報部長の芝田山親方でしょうけど。

古来から力士の四股は邪悪なものを土の下に押し込む力があると言われてきました。また横綱の土俵入りは五穀豊穣と世の中の平安を祈願するために行われてきました。力士の体は健康な体の象徴とも言われています。床山が髪を結い、呼び出しが柝を打ち、行司が土俵を裁き、そして力士が四股を踏む、この一連の所作が人々に感動を与えると同時に、大地を鎮め邪悪なものを抑えこむものだと信じられてきました。

令和二年春場所協会挨拶 八角親方 2020年3月8日 

豪栄道が引退して、大関の番付から白鵬世代は完全に姿を消しました。

琴奨菊・勢の取り組みでは、左四つになったにもかかわらず勢の右上手を引かれて琴奨菊は足を止めてしまいました。舞の海さんがおっしゃっていたように、少し前の琴奨菊なら構わずガブっていたでしょう、よしんば土俵際に逆転を喰らうことになってたとしても。

平成の相撲の残像を幻視しながら静かな土俵を見守る春場所初日でした。

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