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好敵手
”ライバル”という関係はメディアが煽り立てれば形成されるけれど、何場所、何年にもわたる”好敵手”というのはなかなか簡単に見つかるものではありません。
つらつらと旧ブログを見ていたら、「勢・照ノ富士が数々の名勝負を生む予感」という記事を書いていたのを見つけました。
桁違いにスケールの大きい照ノ富士の相撲に対抗できるのは、上背もあって下手や差し手で振り回せる勢だけ、そんな見立てでした。
今から5年前の平成26年のこと。世代は異なりますが、勢も照ノ富士も日の出の勢いで幕内上位まで番付を駆け上がっていた頃です。
結局両者の出世争いは照ノ富士に軍配が上がりましたが、照ノ富士は両膝を、勢は右の肘を、両者の得意な相撲が祟る形で怪我を負い、今彼らは幕内から姿を消しています。
積年の好カードというのは両者の世代、取り口、活躍の時期、複数の条件がハマって辛うじて成立する稀有なものです、横綱・大関を除けば。
さて。
両腕を駆使して相手の出足を凌ぎ、先場所の意趣を返すような遠藤の朝乃山に対する逆転勝ち。
遠藤28歳、朝乃山25歳か。遠藤だってまだまだ大関を目指せる年齢です。これは令和指折りの好カードになるのではないか、、、と密かに興奮を抑えきれない秋場所四日目なのでした。
「この相撲で先場所優勝したんですよね」
毎場所恒例の北の富士さんの金言(珍言?)引用がまだなので、八日目正面解説の舞の海さんのコメントをお借りしました。
先場所幕内優勝した朝乃山と遠藤との取組についてです。
朝乃山と遠藤は両者廻しを使う喧嘩四つなので、鏡に映したように対称的な立ち合いになるかなと予想しましたが、向こう正面側の捌き、つまり朝乃山の左と遠藤の右についてはそうなっていませんでした。
遠藤は例によって右から踏み込み、左差し右前褌の立ち合い。対する朝乃山は左から踏み込んで左前褌でなく、むしろ差すような腕の動きで遠藤の前褌を牽制。
えーっと、これは確か、、、
そうだ! 5日目の白鵬の遠藤戦の立ち合いと同じ。朝乃山は白鵬の取り組み映像を見て真似てみたのか??
結局朝乃山は遠藤に前褌を許さず、右を差して体を寄せながら左の深めの上手を取り、上手投げでの勝利。
副題のコメントに加えるように舞の海さんの解説は続きます。
浅いですけど(右の差し手を)グイグイねじ込みながら前に攻めてますよね。この両者の差が出ましたね。その場で右を差そうとするのではなく、体を押し込みながら右をねじ込んでいってますよね。
舞の海修平 (NHK「大相撲名古屋場所八日目」 2019年7月15日)
“両者の差”は”両者の体格の差”でもあります。
遠藤にもっと上背と体重があって朝乃山のような相撲が取れていたら、今頃大関かあるいは横綱を張っていたのでしょうけどね、、、
トランプ夫妻・阿部夫妻の観戦した五番はどれも短い取り組みだったとはいえ、各力士の持ち味の出た渋い取り組みだったと思うのですが、トランプ大統領に伝わったでしょうかね。
通訳の方は「逸ノ城は懐も深く腰高なことも手伝って叩きが決まりやく、、、あ、ほらね。」とかちゃんと伝えただろうか、、、
朝乃山の大関は、もう少し先かな
元号「令和」を予測できた者がほぼいなかったのと同様、朝乃山の優勝を戦前に予想していた者も少なかったはずです。
正直興ざめなことを言ってしまうようですが、平幕・朝乃山の優勝の一因として、白鵬、貴景勝の不在、朝乃山と鶴竜の割りがなかったことを挙げてよいでしょう。そして十三日目の「誤審問題」、、、これはもういいか。
右四つの立派な型があったからこそではありますが、僥倖も手伝っての賜杯だったということは否めないと思います。
今場所、終盤戦の中で組まれた玉鷲、御嶽海戦は完敗。来場所の番付ではまだそれなりに苦労するはずです。上手を取れないまま寄った豪栄道との相撲も、もう一番取ったら体を開かれて上手投げを喰らうはず。右四つの白鵬なんて、もう対朝乃山戦で先に上手を引く立ち合いのイメトレなんて始めているかも。
荒磯親方は「大関を狙える」、舞の海さんも「横綱になる条件は全て揃ってる」と言っていますが、まだある程度時間がかかるでしょう。
しかし、来場所は朝乃山にとって大きな追い風があります。
明生、阿炎、竜電ら新興力士たちが揃って幕内上位の番付に殺到することです。御嶽海や北勝富士のような大学出身の、勘の良い押し相撲でなく、中高卒の叩き上げの個性派力士たち。
白鵬世代との世代間抗争という意味では、むしろ来場所が本当の潮目となる場所になるかもしれません。
「金の扉が開く」ときが迫っています。
千秋万歳。